「江戸の粋、遠州の情熱。時代を繋ぐ天下祭の系譜。」 静岡県掛川市西南部、遠州横須賀に春の訪れを告げる「三熊野神社大祭」。 江戸時代、第十代横須賀城主・西尾忠尚公が江戸の祭礼文化(天下祭)をこの地に伝えたのが始まりとされています。280年以上の時を超え、今もなお当時の「粋」と「格式」を色濃く残すこの祭典は、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
祭りの三柱
① 唯一無二の移動舞台「祢里(ねり)」
横須賀の出し物は「山車」でも「屋台」でもなく、**「祢里(ねり)」**と呼ばれます。
- 江戸の面影: 二層式の構造を持ち、上段には各町趣向を凝らした「出し物(人形)」、下段にはお囃子を奏でる「連(れん)」が乗り込みます。
- 一本柱の美学: 漆塗りや金箔、精巧な彫刻が施された祢里は、まさに動く芸術品です。
② 魂を揺さぶる「三社祭礼囃子(さんしゃさいれいばやし)」
静岡県無形民俗文化財第一号に指定された、歴史あるお囃子です。
- 二丁太鼓の響き: 笛、太鼓、摺り鉦(すりがね)で構成され、特に「二丁太鼓」による軽快なリズムが特徴です。
- 五つの曲目: 奉納の「昇殿」、舞を伴う「鎌倉」、高揚感を煽る「四丁目」など、場面に応じた曲目が奏でられます。
③ 神の化身が舞う「面と舞(めん・まい)」
横須賀の祭りにおいて、祢里の前で繰り広げられる「舞」は欠かせない要素です。
- 面(おもて)の表情: ひょっとこ、おかめ、般若。それぞれの面が持つ独特の表情と、それに合わせた身体技法が、見る者を異世界へと誘います。
- 一体感: 囃子と舞、そして祢里を曳く「したどん(曳き手)」の掛け声が一体となり、祭りのボルテージは最高潮に達します。
歴史と由来
起源: 享保年間(1716〜1736年)。
立役者: 西尾隠岐守忠尚公(にしおおきのかみただなお)。当時、老中として江戸城に登城していた忠尚公が、江戸の「天下祭(神田明神・日枝神社の祭礼)」に深く感銘を受け、その文化を横須賀の地へ持ち帰りました。
文化の継承: 江戸では失われてしまった「江戸型山車」の形式や「二丁太鼓」のリズムが、ここ横須賀に現存していることから、歴史学・民俗学的にも極めて貴重な資料とされています。
開催概要
開催時期: 毎年4月第1金・土・日曜日
場所: 三熊野神社(掛川市西大渕)周辺、遠州横須賀市街地
指定: 国指定重要無形民俗文化財(三熊野神社祭礼の奉納踊・三社祭礼囃子)
- 静岡県無形民俗文化財(三社祭礼囃子)
